財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す
解雇。黒沢さんと伸吾のことだろう。内々に片付けるつもりだろうが、秘書課のなかでは無理だろう。
彼女がずっと彼を好きだったことは知っていたし、気持ちがわからないでもない。政略結婚は親も絡んでいるから必死になるんだろう。
総帥はこんな何もない私を認めて下さるんだろうか。それに、招待状が盗まれたといっても、伸吾に気を許していた私の落ち度でもある。いくら、彼が私を庇っても秘書を外される可能性もあるだろう。
バスルームの鏡に映る自分の姿にさっきは驚いた。彼の跡が身体中に残っていた。愛されて嬉しい。もう、私も彼へのこの気持ちを抑えきれない。秘書を外されてもいいから別の形で彼の側にいたい。
本当は秘書として、このまま総帥になるまで彼を全力で支えたい。これからが彼の一番大事な時期だ。日傘専務に言われたことを実行しなくてはいけない。水をやり、肥料をやり、大切につぼみを育て花を咲かせるのだ。
そして、どうすれば交際を許して頂けるのだろう。
「菜々、どうした?身体大丈夫か……」