財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す

 目の前にはいつの間にか彼が立っていた。心配そうな顔をして私を見ている。

「あ、いいえ。大丈夫です。それより、このあとどうするんです?」

「そうだな、朝食を食べてから考えよう。ここへ運ばせるからちょっと来てくれ。話がある」

 ルームサービスを頼んだあと、ベッド脇のソファで彼は話しだした。

「あの事件の背景がはっきりした。当事者のひとりである君は全て聞く権利がある。でも正直聞かせたくないんだ。聞いたら君のショックが大きいと思う。知らなくても済むならそれがいい」

「大体想像しているから、覚悟は出来てる。きっと、私との交際も最初から仕組まれていたんでしょ?」

 崇さんはベッドに腰掛けていたわたしの隣に座ると肩を抱き寄せた。

「菜々。あの頃、君は精神的に参っていて普通じゃなかったと言ってただろ。だから気にするんじゃないぞ」

「やはりそうだったのね」
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