財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す
「いつも俺が君を目で追っていたのを、黒沢が気づいて、斉藤に君を誘惑するよう言ったそうだ。そして、これが彼女を縁談相手から外した本当の理由なんだが、彼女は複数の男性と現在も関係を持ち続けている。そのひとりが斉藤。あの二人は君と付き合う前からいままでずっと定期的に関係を持っていたんだ。男女の仲だったんだよ」
私はそこまでは考えていなかった。声も出ない。
ああ、気持ちが悪い。それってつまり伸吾を彼女とある時期……共有していたの?
想像するとたまらなくて、急に吐き気がした。私は口を押さえてよろよろと立ち上がり、バスルームへ駆け込んだ。
「……菜々!?おい、大丈夫か?」
追いかけてきた彼は、目の前でバタンとドアを閉めた私に驚いたようだった。
しばらくしてから落ち着いた私は、顔を洗って出てきた。
「菜々!大丈夫か?気分は?」
「……うん、大丈夫……」