財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す
最後は涙声になってしまった。彼は私をぎゅっと抱きしめて背中を撫でている。
「あいつらは絶対にゆるさん」
総帥はきっと、そんな男に騙された私をもっと嫌悪したに違いない。
「私、きっと総帥から見たら本当に見る眼のない馬鹿に映ったでしょうね。事実だからどうしようもないけれど……」
「菜々、君は被害者だ。自分を責めるな。それに俺がもっと早く、君に勇気を出して告白していたらこんな目に遭わせずすんだ。君への気持ちを黒沢に見抜かれたのも原因のひとつだ」
「そういう問題じゃないです。利用されたのは私。利用されるような馬鹿だったの」
「菜々、やめろ」
彼は私を胸の中にしまうと、ぎゅっと抱きしめた。