財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す
企み~黒沢side
気に入らない秘書がいる。香月という一年下の秘書だ。
私が榊原財閥本部の秘書になったのは、財閥主催のパーティーへ父と共に参加したことがきっかけだった。大学四年生の時だったが、御曹司の崇さんを紹介されて驚いた。
今までに父から紹介された人とは全く違う。異次元だと思わせるようなオーラと美貌に私はすっかり魅了された。彼女もいないと聞いて、父に頼んでなんとか秘書課へ潜り込んだ。
入ったときから、ライバルと言えば橘さんくらい。彼女も大きな企業のお嬢様で私と同じ目的で親から入れられたと言っていた。私と違うのは、彼女には片想いを続ける幼馴染みがいて、身分違いだが彼以外は考えていないと言っていたこと。
つまりその時点で気になるようなライバルは秘書課にいなかった。私が単独首位に躍り出た瞬間だった。何しろ、総帥は父の意向を知っていながら私を秘書課へ配属したのだ。
ところがだ。日傘取締役が営業部からの秘書をそのまま連れて役員室へ上がってきた。こういう人は半数くらいいる。それぞれの役員が出世して本部役員室勤務になるのだ。日傘取締役は一足飛びに出世して専務取締役になってしまった。