財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す

「名前で呼ぶなって言ってるでしょ」

 横に来ると私の腰を撫でた。気持ち悪い。

「そんなこと言っていいのか?あの美人の新しい秘書、辰巳の後輩らしいぞ。秘書課の男達も目を付けているが、何しろ御曹司と親しい日傘さんの秘書だ。みんな様子見してる。しかも、自分から御曹司が話しかける秘書なんてあいつだけだぞ」

「別に、崇さんはただ日傘さんのスケジュールを知りたいだけでしょ」

「それだけじゃないだろうな。たまに目の端で追いかけてる。絶対気にしている。あんな御曹司ここに四年いるが初めて見る」

「……!」

 崇さんはたまに香月さんをいじって虐めている。彼女を褒めているわけではないので心配いらないだろうと思っていたが、どうやら違うようだ。御曹司は口を開くと皮肉屋で素直なところがない。

 でも女性秘書相手にそれさえも珍しい。何しろ他の子は完全無視。伸吾の言うことも一理あるのだ。
< 220 / 267 >

この作品をシェア

pagetop