財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す

「ああ、元気そうだったよ。相変わらずのシニカルなもの言いで負けそうだった。君にも近いうちに是非会いたいと言っていた。そして……悔しいんだが、崇と君のことは『予想通りになりました』と得意げに言われたよ。これが私への()()だそうだ。全く彼には敵わないよ」

「日傘専務理事がここを去る直前に私へ言い残されたことがあります。自分は崇さんに種まきをした。でも花を咲かせるには毎日の水と時々の肥料が必要で、私に水と肥料をあげてねと言い残されたんです。あの頃は何を言っているんだろうと思っていましたが、ようやく意味がわかりました」

「日傘君がそんなことを?」

「ええ。私は素晴らしい上司に恵まれて本当に幸せです。日傘専務理事も素晴らしい上司でした。今は優しくて頼もしい崇さんのような人にお仕えできています。近頃は秘書以上の愛情も注いでくれます。これからは彼のために私のすべてで支えていきます」

「最近の崇は本当に素直になった。急に電話をしてきて今までの手法を聞いてきたりする。一皮むけたな。君をあのときやめさせないでよかった。君のことを辰巳が可愛がるはずだな……」
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