財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す

理由

 
 北海道出張から帰ってきた崇さんが、私を呼ぶと突然言った。

「菜々。母さんにお土産を買ったから、あさって実家へ顔を見せようと思うんだ。お前のことを丁度いいから紹介しに連れて行きたいんだ。急だけどいいか?」

「……」

 またはじまった。崇さんの特徴のひとつ。

 ひらめきに任せて仕事を急に進めたり、スケジュールを思いつきで変更したりする。

 しかも、こんな大事なことをどうして突然?

 普通は念入りにお好みを伺って下準備して事前に購入して……いくらなんでも、時間がない。明日はスケジュールもびっちりで何か探して買いに行く暇もない。あまりにひどい。

「あ、あの……準備する時間がないので、私はまた今度ということではいかがですか?」
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