財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す
彼は私を抱き寄せた。
「ちょ、ちょっとこんなところでやめてください!みんな見てる……」
通りに人がいる。もう、おかしいんじゃないの?みんなこっちをチロチロ見ている。彼はそれでなくても人目を引いてしまう。
「お前のことを通りにいる男どもがさっきからジロジロ見ていた。菜々は俺のだ。あいつらから見えないように俺がガードしてるんだよ、馬鹿だな」
「!」
「さてと、俺の部屋でゆっくりと肥料をもらうとするか。どうせ来週も忙しいし、俺の栽培担当はきっと泊まりに来てくれないからな。水はもらえても肥料がな……。まとめて補充してもらうとするかな。今日は泊まっていけ」
あっけにとられている私の手を握って、予約していた店に行こうと誘う。例の指輪だ。もう、結局この微笑みに引きずられて、またうなずいてしまうのだ。
栽培担当はすっかり懐柔されてしまった。正直、肥料のやりすぎには注意しないといけないかもしれない。肥料はやりすぎても芽は枯れるらしい。そう彼に言ったら笑い飛ばされた。