財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す
「……あ、すみません」
一見してわかる辺りを払うようなオーラ。三十六歳になった彼は、そろそろ財閥御曹司として仕事を半分くらいお父様から引き継ぎ始めている。
来月から海外を回り始めるのもその兆候だと本部内では囁かれていた。少なくとも半年以上は戻れないだろうと専務も言っていた。
「専務は部屋にいる?少し早かったか?」
「いいえ。崇さんがお見えになると連絡があったので、予定をキャンセルしました。何か準備されてましたのでお一人でお部屋におられます。ちょっとお待ちください」
私は御曹司をおいて、先に専務へ声をかけた。すると入ってもらうようにと指示された。そこで御曹司をお通ししようとしたら、さっき持ってもらったファイルのピンクの付箋がふたつ、彼の腕の辺りについていた。
「あ、ちょっと止まって下さい」
私は付箋を取ると、他にもついてないか、彼の身体を見ながら一周する。