財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す
捕獲
最近はすっかり支社での生活に慣れた。あの左遷、いや都落ちから半年が過ぎていた。
辰巳さんから頼まれたことは秘書室長の新藤さんからもきちんとやってくるようにと異動前日に密命が出た。こんな危ないことをさせるなんて、私って結局どこへいってもこういう扱いなんだと思って、やはり会社を辞めたいですと喉元まで出かかった。
でも横に立って私の顔色を見ていた辰巳さんが「お願いだ、辞められたら俺も辞めることになる」とまた手を合わせた。そして、お詫びと送別だと言って、私にその後、フレンチのフルコースを奢ってくれた。まあ、ランチだったけど……。
そして、引き継ぐ事も特にない私は、翌月頭から神奈川支社へ普通の事務として入った。でも、支社長は秘書室長から何か聞いていたらしく、最初私を部屋に呼んで言った。
「ええと、香月さん。君には僕の秘書というか庶務をやってもらうよう新藤秘書室長から言われている。まずは、僕宛に来る書類や郵便物などの管理を頼むよ。こっちのシステムに慣れたら、パソコンで書類もやってもらう」
「……はい」
お腹の出たおじさまは赤い顔をして私を見ている。そして今たまっている書類を見せた。