財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す
彼の思惑
その夜、秘書課の親友の住谷真紀に現状把握のため連絡をした。
「ごめん、菜々。私も聞いたのは昨日なの。びっくりしたよ、辰巳さんが崇さんから外されたって噂になっていたのよ。でも辰巳さんに直接聞ける人もいないし、ご本人はやっぱりなんか元気ないし、これは本当なんじゃないかって……そのせいもあって秘書課内で御曹司の動向が全くわからなくなっちゃってさ。そしたら急に帰ってきたんだよ」
「昨日突然こっちに現れたの。びっくりしたよ。まだ海外回り始めて半年だったし……」
「まあね、なんか一時帰国するためにすごい勢いで先週回っていたと帰ってきて挨拶で話してた。直接重要取引先に電話してほとんど前倒しで仕事を片付けたらしい。それで総帥に文句も言わせず、急遽日本へ戻ってきたみたい。相変わらずの敏腕ぶりだよね。あれでもう少し愛想があれば完璧なのにね。高身長、高収入、イケメン。いやあ、残念だねー」
全くもってその通り、異議なし。
「それにしても、いくらなんでも私を秘書とかおかしいよ。総帥と喧嘩になるのわかりきってる」