財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す

 指をビシッと私に指した。これだからもう。何なの……。前の専務とは大違い。このツンデレな感じはどうしても慣れない。

「支社の近くなんて知らないからお前に任せるよ」

「じゃあ、行ってみたかったスペインバルのお店でもいいですか?」

「ああ、期待してるから……」

 そう言って、部長の資料の説明を求められたところだけ応じた。

 引き継ぎをしていたらあっという間に夜になり、予約を入れたその店にふたりで入った。

「いい雰囲気だな」

「そうですね」

「これで味が良ければ合格だな」

「ひと言余計です……」
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