財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す

 必ず嫌みを言う性格なの?呆れて彼を見やると、背の高い彼は私を見下ろしてニヤッと笑った。ふたりで奥の席に向かい合わせで座った。

 海鮮マリネが前菜だ。エスカルゴも美味しい。サングリアが自然と進んでしまう。彼を見ると頷いて私を見た。

「どうやら味も合格だな」

 お腹すいていたのもあり、パエリアが出てきた頃にはふたりでたくさん飲んで食べて、冗談を言いながら時間が過ぎた。こんな風にふたりで話が出来るなんて意外だった。

「香月は兄弟いるのか?」

「あ、弟がひとりいます。大学卒業して今年から働き始めましたが、大阪赴任になったので家を出ました」

「実家は支社の近くなんだとか?」

「そうです。ここから一時間以内なんです」
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