ホテル ポラリス 彼女と彼とそのカレシ?
5 『生きている人間の時計は動き続けているんだもの』
クローズのプレートが掛かったコカブの入口で、悩ましげに行きつ戻りつしていた航太は、現れた人影に申し訳なさ気に頭を掻いて会釈した。
「すみません、お寝みのところを」
「多恵さんは?」
航太は薄暗い店内の奥に見える外明かりを視線で示した。
「水をもらえる?」
航太は言われるまま冷蔵庫からミネラルウォータのボトルを取り出し差し出した。
体調が悪いとフェルカドを休んだ多恵が、夜中に青ざめた顔でふらりとコカブに現れて、無言でバーボンのボトルを掴むと、プールサイドへ出たきり戻ってこない。
航太が仮眠している間に停電があり、その対応で疲れたようだと本多は言うけれど、誰よりもパワフルでタフな姉が、弱音を吐くなど信じられない。あんな姿を見たのは初めてで、どう扱っていいのか考え倦ね、玲丞に相談したのだ。
「あとは僕に任せてください。報せてくれてありがとう」
そう言って、まごつく肩を力強く叩き、緊急オペに立ち向かう執刀医の如く青い明かりのなかへと吸い込まれていく背中に、亡き養父の面影を見て、姉が彼に惹かれる気持ちがわかったような気がする航太だった。
「すみません、お寝みのところを」
「多恵さんは?」
航太は薄暗い店内の奥に見える外明かりを視線で示した。
「水をもらえる?」
航太は言われるまま冷蔵庫からミネラルウォータのボトルを取り出し差し出した。
体調が悪いとフェルカドを休んだ多恵が、夜中に青ざめた顔でふらりとコカブに現れて、無言でバーボンのボトルを掴むと、プールサイドへ出たきり戻ってこない。
航太が仮眠している間に停電があり、その対応で疲れたようだと本多は言うけれど、誰よりもパワフルでタフな姉が、弱音を吐くなど信じられない。あんな姿を見たのは初めてで、どう扱っていいのか考え倦ね、玲丞に相談したのだ。
「あとは僕に任せてください。報せてくれてありがとう」
そう言って、まごつく肩を力強く叩き、緊急オペに立ち向かう執刀医の如く青い明かりのなかへと吸い込まれていく背中に、亡き養父の面影を見て、姉が彼に惹かれる気持ちがわかったような気がする航太だった。