こじらせハイスペ御曹司に、プロポーズ(!?)されました

3話 アイツがモテるなんて…!?

〇宝山マンション・桜庭家・リビング(夜)
咲良(宝山游からプロポーズ(?)されてから)
(すっかりその気になったママを筆頭に)
(私は結婚準備を始めていた)

ゆき子が感動した顔でリビングを見渡している。
たけるも嬉しそうに走り回っている。
20畳もありそうな、広々としたリビング。
ゆき子「すぐに、こんないいマンションを用意してくれるなんて!」

咲良(ここは、宝山財閥所有のタワマン)
(警察にも不審に思われないよう、とりあえず宝山游の言う通りここに引っ越してきたんだけど……)

青ざめて、ぶるっと震える咲良。
咲良(これ……もし、私との勝負ですぐアイツが勝ったらどうするんだろう)
ぽいっと捨てられる咲良・ゆき子・たけるを思い描き……

咲良(絶対負けられないじゃん……!)
半泣きで、勝利を誓う咲良。

そこへ、「ピンポーン」とインターフォンが鳴る。
咲良「はーい」

ドアを開けると、私服姿の游が入って来る。(清潔感のあるシャツとパンツ姿)
游「差し入れだ」
游が手にしていたのは、抱えるほどたくさんのドーナツの箱。
咲良「多っ……!」

たけるは、「わーい」とさっそくドーナツの箱を開け、ゆき子もにこやかにたけるの世話をしている。
その様子を遠目に見ながら、咲良は游と話している。
咲良「ここまでしてもらわなくていいのに」

游「気にするな。ちょっと買い過ぎたから、やる」
咲良「ああ……そうなの?」
咲良(金持ちの買いすぎは、桁が違うな……)

咲良「あの、ご両親との顔合わせのことなんだけど……」
游「それが急に、しばらく海外へ出張することになってな」
游「このことは全部伝えて、快諾ももらえてる」

咲良「そうなんだ」
少しほっとする咲良。
咲良「じゃあそれまでに、いろいろ準備しておかないとね」

游「そうだな」
游「あ、あと。大学進学に有利になるよう、学校の編入手続きもしておいた」
咲良「……」

咲良「はい??」
急展開についていけず、目を瞬かせる咲良。

〇宝山学園高等学校・外観(朝)
きらきらと輝くように綺麗で立派な、私立高校の外観。
咲良(友達と離れ離れになるのは寂しいけど……)

〇同・廊下(朝)
咲良(まさかあの、宝山学園の美術科に入れるなんて!!)
絵画が飾られている、ピカピカの廊下。

咲良(私が編入したのは、宝山財閥の先代が創立した『宝山学園高等学校』)
(宝山家は代々芸術関係の事業にも力を入れていて)
(この美術科は、将来有望な芸術家達が集うことで有名なのだ)

咲良(大嫌いだけど……ありがとう、宝山游!!)
(しっかり、学ばせていただきます!)
意気揚々と、目を輝かせて歩いている咲良。

咲良の横にぴったりと寄り添うように後ろから来る游。
それに気づく咲良。
游「どうして勝手に家を出た」
游「迎えに行ったのに」

咲良「さすがに、送り迎えまでしてもらうわけにはいかないよ」
咲良「あの立派な車も、目立つし……」
游「だから、その、勝手に行かれるのは、なんというか……」
游、うまく言葉にできないままさっさと歩き出す。

咲良「寂しい……わけないよね?」
游「!!」
游、前を向いたまま顔を赤く染めている。

が、すぐにぷいとそっぽを向き。
游「そんなわけあるか」
游「やっぱり朝は、一人で行け」
咲良には、頬を染めている游の顔は見えず……。
咲良(やっぱヤなヤツ~!!)

咲良(だけどこのイジワル男が……)

周囲の女子達は、咲良をじとっとした目で見ている。
咲良(めちゃくちゃモテるとは……!)
鋭い視線をいくつも感じ、背筋がゾクリとなる咲良。

カッコいい游の横顔をちらっと見る咲良。
咲良(よく見たら……顔もいいし)
(成績も優秀で、生徒会長もしてたら……)
(モテるのも、当たり前なのかもしれないけど……)
納得いかない様子の咲良。

咲良(皆、コイツの本性を知らないんだ)
と、密かに思う咲良だった。

〇同・3年A組教室内
絵具を床に落としてしまった咲良。

拾おうと手を伸ばしたが、
その絵具が、誰かの足によって蹴られる。

絵具を蹴った女子生徒が、くすっと笑いながら咲良を見下ろす。
女子生徒「あ、ごっめーん」
周りも、くすくすと笑っている。

咲良(転校初日なのに、さっそく孤立しちゃったな)
ショックながらも、まあ仕方ないという感じで絵具に手を伸ばす咲良。

が、咲良よりも先に絵具を拾う男の手。

顔を上げると、游が絵具を拾っていた。

游が、絵具を蹴った女子生徒達を振り向く。
游「こいつ、俺の婚約者なんだ」
游「悪いけど、いじめないでくれるか?」

女子生徒達、途端に顔を赤らめ体をくねらせる。
女子生徒「そ、そんなぁ~。いじめたなんてぇ~」

咲良の肩を抱く游。
游「行くぞ」

寂し気な顔をする女子生徒達に見送られながら、肩を抱かれたまま歩く咲良。
咲良「(小声で)は、離してよ」
少し頬を赤らめながらも本気で嫌がる咲良。

游も傍から咲良に耳打ちする。
游「俺がくっついていれば、嫌がらせもされないだろ」
はっとする咲良。

咲良(コイツ、わかってやってるんだ……)

游「モテて悪いな」
ニヤッと笑う游に、カチンっとくる咲良。
咲良(やっぱ嫌い!)

そこに、咲良の腕をぐいと引く誰か(由乃)の手。
咲良がはっと顔を上げると、満面の笑みの姫川由乃(ひめかわ ゆの)(17)の顔が飛び込んでくる。
由乃「咲良ちゃんでしょう! うわ~、久しぶり!!」
・由乃…天真爛漫な、ザ・お嬢様な見た目。

咲良「もしかして……」
咲良「由乃ちゃん!?」

由乃「そうだよ、姫川絵画教室の、姫川由乃!」

〇回想・イメージとして

咲良(姫川由乃ちゃん。姫川絵画教室の、姫川先生の娘さんだ)

姫川美山(ひめかわ びざん)(35)先生。顔は整っており、髪を後ろで束ねている。芸術肌な男性。
その娘である、由乃(8)と、仲良く絵を描いている咲良(8)。

咲良(あの頃も仲良くしてたけど)

〇回想ここまで

咲良(まさか、また会えるなんて!)
懐かしそうに手を取り合う由乃と咲良。

咲良「なんで由乃ちゃんがいるって教えてくれなかったの!?」
游「今日、紹介しようと思ってた」
由乃「だけど、まさか游くんの婚約者が咲良ちゃんだったなんて!」
由乃「あの頃、すっごく仲悪くなかった!?」

咲良「ほんとだよね……いや、実はさ」
話を止めようと、ごほんと咳払いする游。
游「昔は昔」

游「今は今」
と、咲良の肩をぐいと抱き寄せ、こめかみ辺りに軽くキスをする游。

カーっと顔が赤くなる咲良。
由乃「ほんと、今は仲良しなんだね~♡」

游「そういうわけだ。じゃ、俺ら行くから」
と、游は咲良の肩を抱いて歩いていく。

咲良「(小声で)な、何すんのよ……」
游「だって、本当のことがお父様に伝わったら大変だろ」
游「援助も全部なかったことにされる」

咲良「そ、それもそうだけど……」
咲良(いきなりそんなことされると、心臓に悪いからやめて~!)
ひそかに、ドキドキする胸をおさえる咲良だった。
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