こじらせハイスペ御曹司に、プロポーズ(!?)されました
7話 新たな選択肢
〇宝山学園高等学校・美術実習室
翌日。
キーンコーン……と授業終わりのチャイムが響く。
チャイムが聞こえないかのように、一人絵を描き続ける咲良。
立ち上がった游が、咲良に声をかけようとするが……
先生「宝山。ちょっといいか?」
游「あ、はい」
游は離れていき、咲良は一人、絵を描き続けている。
咲良の肩を、つんつんとつつく女子(由乃)の指。
咲良がはっと振り返ると、由乃がにっこりと笑う。
由乃「咲良ちゃん、もう授業終わったよ」
咲良「えっ!」
慌ててまわりを見回す咲良。
咲良「ありがとう、由乃ちゃん」
由乃「ううん」
由乃「游くんが先生に呼ばれて行っちゃったから」
由乃「私が早く教えてあげないとって思って」
嫌味ではなく、おかしそうにくすりと笑う由乃。
咲良「ああ……ごめん」
自嘲気味に苦笑する咲良。
〇廊下
並んで歩いている由乃と咲良。
咲良「由乃ちゃんがいてくれて本当によかったよ」
咲良「じゃないと、私クラスで完全に孤立してただろうな」
由乃「游くん、モテモテだもんねー」
咲良「やっぱり、そうなんだ……」
由乃「前は仲悪かったけど、咲良ちゃんも、どこかのタイミングで游くんのこと好きになったんでしょ?」
由乃「それって、最近のことなの?」
咲良「いや……それがね。私……アイツのこと……」
歯切れの悪い咲良を、由乃は不思議そうにのぞき込む。
由乃「え?」
咲良「実は…―」
咲良(私は、由乃ちゃんに全てを打ち明けた)
〇屋上
お弁当を一緒に食べている咲良と由乃。
由乃「……そうだったんだ」
由乃「じゃあ咲良ちゃんの方は、愛のない結婚になっちゃいそうなんだね?」
咲良「申し訳なさすぎるよ……こんな気持ちで結婚するのって」
由乃「お金には苦労しないとはいえ、その結婚は不本意だよねぇ……」
由乃、何かをひらめき、真剣な顔。
由乃「あ……もしかしたら、あるかも」
由乃「咲良ちゃんが結婚しなくても、絵を描き続けられる方法が!」
咲良「……え?」
はてな?と首を傾げる咲良。
〇姫川絵画教室・外観
『姫川絵画教室』という看板。
〇同・中
絵画や石膏像が並んでいる。
何人かの中高生くらいの生徒達が、絵を描いている。
由乃が、咲良を案内しながら歩く。二人とも学校帰りという設定で、制服姿。
由乃「久しぶりだよね!」
咲良「うん! 懐かしい……」
感動している咲良。
そこに現れる、姫川美山(55)。
姫川「やあ、咲良ちゃん。久しぶりだね」
咲良「姫川先生!!」
久しぶりの再会に、笑顔を輝かせる咲良。
〇同・応接間
テーブルに「姫川絵画教室」のパンフレットが並んでいる。
大きなソファに姫川が座っている。
向かいには、咲良が座っている。
姫川「娘から、事情は聞いたよ」
姫川「率直に言うと、うちで働くことで、君の才能と家族を守ることができるかもしれない」
はっと明るい顔になる咲良。
姫川は、パンフレットを見ながら説明する。
姫川「うちの絵画教室で働くと、毎日好きなだけ絵を描けるし、月一の個展で絵が売れれば、それも収入になる」
姫川「家族寮完備だし、君は事情も事情だから、お手伝いさんもつけるよ」
咲良「……いいんですか?」
姫川「もちろん」
姫川「君の才能は買ってるよ。君は近い将来、きっと絵で活躍できる」
姫川「そんな才能に溢れた君を育てられるなんて、こんな名誉なことはないよ」
姫川「正直、お父様が亡くなって絵画教室を辞めなければいけなくなった時、何かしてあげられればよかったんだけど……」
姫川「実は、あのままさよならしてしまったことを、後悔していてね」
姫川「だからまたこうして、再会できて本当に良かったと思ってるんだ」
姫川「あの頃の、罪滅ぼしじゃないけど……」
申し訳なさそうな姫川に、ぶんぶんとかぶりを振る咲良。
咲良「と、とんでもありません……!」
咲良「こんなに、よくしていただいて……!」
咲良「感謝の気持ちしか、ありません」
うるうると目がうるんでくる咲良。
姫川「すぐに決めてもらわなくて、全然構わないから」
咲良「ありがとうございます」
深々と頭を下げる咲良。
咲良「ありがとう、由乃ちゃん」
近くに座っていた由乃にも、お礼を言う。
由乃「ううん。役に立てるならよかったよ」
由乃「結婚ってやっぱり、好きな人としたいもんね!」
明るく、ピースサインをしてくれる由乃。
〇同・応接間の外
ドアの外で、女子数人が三人の会話を盗み聞きしている。
モブ女子「聞いた?」
モブ女子「やばー」
と興奮気味に囁き合っている様子。
〇カフェ
向かい合って座っている咲良と游。
游「結婚を……考え直したい?」
咲良「うん」
咲良「姫川先生のところで、絵を描きながら働けることになって」
游「どうして、勝手にそんなこと……」
言いかけて、はっとする。
〇回想・桜庭家のリビング(夜)
咲良「自分勝手で強引なところ、あの頃と全然変わらないんだね」
咲良「そういうところ、すごく嫌いだった」
〇回想ここまで
慌てて口をつぐむ游。
游「……」
咲良「游の気持ち……嬉しかった」
咲良「だけど、游が私のことを好きでいてくれるなら……」
咲良「私はその気持ちを、利用することになるわけで」
咲良「それは、できないと思った」
咲良「だから……ごめん」
游、ぐっと言葉を呑み込んで……。
少し考えてから、改めて、真剣な顔を上げる。
游「お前が絵を描き続けることができて、家族3人で幸せに生きていけるなら……」
游「それは、何よりも、素晴らしいことだと思う」
游「お前の気持ちは……受け止める」
游、うつむき加減で悲しみをこらえるような顔をしている。
咲良(游……)
初めて見るような顔に、胸がきゅんとなる咲良。
咲良「高校も中退させてもらう」
咲良「マンションも、すぐに出ていくし――」
咲良の言葉を遮る游。
游「勘違いするな」
咲良「え?」
游が自信に満ちた顔で咲良を見る。
游「俺が咲良を好きだということに変わりはない」
游「結婚したいという気持ちも、変わらない」
游「だから、お前に本気で結婚したいと思わせる」
游「絶対に思わせるから……」
游「高校もマンションも、出ていくな」
はっと目を見張る咲良。
游は咲良の手を取り、きゅっと握る。
游「今度こそ、咲良をちゃんと振り向かせてみせる」
真面目な顔で咲良を見つめる游。
頬を赤らめ、何も言えなくなる咲良。
〇咲良の部屋(夜)
スマホを見ている咲良。
メッセージの相手は『游』。
『おやすみ。怖い夢見たらすぐ電話していいからな』
咲良(待って)
(決別したつもりのはずが……)
(逆に、束縛と愛情が深まってない?)
顔がほてっている咲良。
咲良(まいったな……)
(大嫌いだったはずが……)
(今は游の気持ちが、嬉しいって思っちゃってるよ……)
ぼふっと枕に顔をうずめる咲良。
翌日。
キーンコーン……と授業終わりのチャイムが響く。
チャイムが聞こえないかのように、一人絵を描き続ける咲良。
立ち上がった游が、咲良に声をかけようとするが……
先生「宝山。ちょっといいか?」
游「あ、はい」
游は離れていき、咲良は一人、絵を描き続けている。
咲良の肩を、つんつんとつつく女子(由乃)の指。
咲良がはっと振り返ると、由乃がにっこりと笑う。
由乃「咲良ちゃん、もう授業終わったよ」
咲良「えっ!」
慌ててまわりを見回す咲良。
咲良「ありがとう、由乃ちゃん」
由乃「ううん」
由乃「游くんが先生に呼ばれて行っちゃったから」
由乃「私が早く教えてあげないとって思って」
嫌味ではなく、おかしそうにくすりと笑う由乃。
咲良「ああ……ごめん」
自嘲気味に苦笑する咲良。
〇廊下
並んで歩いている由乃と咲良。
咲良「由乃ちゃんがいてくれて本当によかったよ」
咲良「じゃないと、私クラスで完全に孤立してただろうな」
由乃「游くん、モテモテだもんねー」
咲良「やっぱり、そうなんだ……」
由乃「前は仲悪かったけど、咲良ちゃんも、どこかのタイミングで游くんのこと好きになったんでしょ?」
由乃「それって、最近のことなの?」
咲良「いや……それがね。私……アイツのこと……」
歯切れの悪い咲良を、由乃は不思議そうにのぞき込む。
由乃「え?」
咲良「実は…―」
咲良(私は、由乃ちゃんに全てを打ち明けた)
〇屋上
お弁当を一緒に食べている咲良と由乃。
由乃「……そうだったんだ」
由乃「じゃあ咲良ちゃんの方は、愛のない結婚になっちゃいそうなんだね?」
咲良「申し訳なさすぎるよ……こんな気持ちで結婚するのって」
由乃「お金には苦労しないとはいえ、その結婚は不本意だよねぇ……」
由乃、何かをひらめき、真剣な顔。
由乃「あ……もしかしたら、あるかも」
由乃「咲良ちゃんが結婚しなくても、絵を描き続けられる方法が!」
咲良「……え?」
はてな?と首を傾げる咲良。
〇姫川絵画教室・外観
『姫川絵画教室』という看板。
〇同・中
絵画や石膏像が並んでいる。
何人かの中高生くらいの生徒達が、絵を描いている。
由乃が、咲良を案内しながら歩く。二人とも学校帰りという設定で、制服姿。
由乃「久しぶりだよね!」
咲良「うん! 懐かしい……」
感動している咲良。
そこに現れる、姫川美山(55)。
姫川「やあ、咲良ちゃん。久しぶりだね」
咲良「姫川先生!!」
久しぶりの再会に、笑顔を輝かせる咲良。
〇同・応接間
テーブルに「姫川絵画教室」のパンフレットが並んでいる。
大きなソファに姫川が座っている。
向かいには、咲良が座っている。
姫川「娘から、事情は聞いたよ」
姫川「率直に言うと、うちで働くことで、君の才能と家族を守ることができるかもしれない」
はっと明るい顔になる咲良。
姫川は、パンフレットを見ながら説明する。
姫川「うちの絵画教室で働くと、毎日好きなだけ絵を描けるし、月一の個展で絵が売れれば、それも収入になる」
姫川「家族寮完備だし、君は事情も事情だから、お手伝いさんもつけるよ」
咲良「……いいんですか?」
姫川「もちろん」
姫川「君の才能は買ってるよ。君は近い将来、きっと絵で活躍できる」
姫川「そんな才能に溢れた君を育てられるなんて、こんな名誉なことはないよ」
姫川「正直、お父様が亡くなって絵画教室を辞めなければいけなくなった時、何かしてあげられればよかったんだけど……」
姫川「実は、あのままさよならしてしまったことを、後悔していてね」
姫川「だからまたこうして、再会できて本当に良かったと思ってるんだ」
姫川「あの頃の、罪滅ぼしじゃないけど……」
申し訳なさそうな姫川に、ぶんぶんとかぶりを振る咲良。
咲良「と、とんでもありません……!」
咲良「こんなに、よくしていただいて……!」
咲良「感謝の気持ちしか、ありません」
うるうると目がうるんでくる咲良。
姫川「すぐに決めてもらわなくて、全然構わないから」
咲良「ありがとうございます」
深々と頭を下げる咲良。
咲良「ありがとう、由乃ちゃん」
近くに座っていた由乃にも、お礼を言う。
由乃「ううん。役に立てるならよかったよ」
由乃「結婚ってやっぱり、好きな人としたいもんね!」
明るく、ピースサインをしてくれる由乃。
〇同・応接間の外
ドアの外で、女子数人が三人の会話を盗み聞きしている。
モブ女子「聞いた?」
モブ女子「やばー」
と興奮気味に囁き合っている様子。
〇カフェ
向かい合って座っている咲良と游。
游「結婚を……考え直したい?」
咲良「うん」
咲良「姫川先生のところで、絵を描きながら働けることになって」
游「どうして、勝手にそんなこと……」
言いかけて、はっとする。
〇回想・桜庭家のリビング(夜)
咲良「自分勝手で強引なところ、あの頃と全然変わらないんだね」
咲良「そういうところ、すごく嫌いだった」
〇回想ここまで
慌てて口をつぐむ游。
游「……」
咲良「游の気持ち……嬉しかった」
咲良「だけど、游が私のことを好きでいてくれるなら……」
咲良「私はその気持ちを、利用することになるわけで」
咲良「それは、できないと思った」
咲良「だから……ごめん」
游、ぐっと言葉を呑み込んで……。
少し考えてから、改めて、真剣な顔を上げる。
游「お前が絵を描き続けることができて、家族3人で幸せに生きていけるなら……」
游「それは、何よりも、素晴らしいことだと思う」
游「お前の気持ちは……受け止める」
游、うつむき加減で悲しみをこらえるような顔をしている。
咲良(游……)
初めて見るような顔に、胸がきゅんとなる咲良。
咲良「高校も中退させてもらう」
咲良「マンションも、すぐに出ていくし――」
咲良の言葉を遮る游。
游「勘違いするな」
咲良「え?」
游が自信に満ちた顔で咲良を見る。
游「俺が咲良を好きだということに変わりはない」
游「結婚したいという気持ちも、変わらない」
游「だから、お前に本気で結婚したいと思わせる」
游「絶対に思わせるから……」
游「高校もマンションも、出ていくな」
はっと目を見張る咲良。
游は咲良の手を取り、きゅっと握る。
游「今度こそ、咲良をちゃんと振り向かせてみせる」
真面目な顔で咲良を見つめる游。
頬を赤らめ、何も言えなくなる咲良。
〇咲良の部屋(夜)
スマホを見ている咲良。
メッセージの相手は『游』。
『おやすみ。怖い夢見たらすぐ電話していいからな』
咲良(待って)
(決別したつもりのはずが……)
(逆に、束縛と愛情が深まってない?)
顔がほてっている咲良。
咲良(まいったな……)
(大嫌いだったはずが……)
(今は游の気持ちが、嬉しいって思っちゃってるよ……)
ぼふっと枕に顔をうずめる咲良。