縁結び−変わる勇気をくれた君と、秋の風―
「これだよ!」
彼はちょっと興奮気味に憧子の作品を指差した。
「『秋風』っていう、この字!達筆!トメ・ハネ・ハライ、完璧だし、バランス良すぎ!マジでかっけー!」
憧子の作品を褒め称える彼は、心からそう思っているのが分かるほどに、目をキラキラさせている。
「ど、どうも…?」
反射的にお礼を言うと、彼が満面の笑みで憧子に笑いかけた。
思わずドキッとする。
その時。
「だいちー?どこにいるのー?」
女性の声が聞こえた。
「やべ。姉ちゃんが探してる。」
そう言ってダイチと呼ばれたその彼は、社務所から急いで外に出ると
「姉ちゃん、こっちこっちー!社務所のほうー!」
と声を上げた。
「あ、そうだ。」
くるっと憧子の方を振り向いた彼は「御守りが欲しいです!」と言って、社務所の表の方を指差した。
「あ、はい!どうぞ。」
彼が社務所の正面に回ったのを確認しながら、憧子も御守を置いているスペースの正面に移動する。
彼がうーんと悩んでいるのを、羅列した御守越しに見守っていると、1人の女性がやってきて彼の横に立った。
ダイチをさっき呼んでいたお姉さんだろう。