使えないと言われ続けた悪役令嬢のその後

第3話 ヒロインの正体

「ようこそ、いらっしゃいました」

 長閑な田園風景の中に佇む、修道院。まるで陸の孤島のように、人里すら離れた場所に、その建物はあった。

 首都で見た大聖堂ほどの大きさはなく、素朴な感じだけど、ひっそりと静かに過ごしたい私にピッタリの場所だった。

 (つた)()う外壁も、(おもむ)きがあっていい。そこから覗く、白い壁に青い屋根。三角屋根までついていて、まさに前世で見たことがあるような教会だった。
 恐らく礼拝堂がある建物だろうか。ステンドグラスの窓が垣間見えた。

 実はこんな場所で結婚式を上げるのが夢だったのだ。

 しかし、ここは修道院。さらにいうと今の私には婚約者すらいない立場なのだ。結婚など、夢のまた夢。出会い以前に、外部からの人間と接触することなど、できないような気がした。

 だからお父様はここを選んだのかしら。

 確かにここなら、人目を避けることができる。口さがない者たちも寄って来ないだろう。道中、不安なことばかり想像していたから、着いた瞬間に安堵した。

 が、それも束の間だった。

「え? 何故、貴方様がここに?」

 思わず一歩、後退る。何故なら、目の前にいるのが不自然な人物が、そこに立っていたからだ。
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