使えないと言われ続けた悪役令嬢のその後
修道長に建物の中を一通り案内された後、「着替えなくてもいいので、まずこの修道院の周りや中を、散策してみてください」と言われた。
暗に早く慣れるように、と言っているのだろう。
前世の知識でも、修道院の一日は忙しいって聞くし。ここでも『使えない』って言われないためにも頑張らないとね!
そう意気込みながら、まず気になっていた礼拝堂に足を向けた。ステンドグラスを見たい気持ちもあったが、お祈りを先にしたかったのだ。
この気持ちをどうか、汲んでくださいますように。修道院での生活がいいものでありますように、と。
そしたら、牧師姿のエリクセン殿下が礼拝堂にいたのだ。
「朝、ハイドフェルド邸で見送ってくださったのに」
どうしてここに居るんですか? クリオはどうしたんですか?
一気に込み上げてくる疑問を消化できなかったのか、それらが口から出ることはなかった。
代わりにエリクセン殿下は、いつものように温かい目で私に微笑む。
「それは俺であって俺じゃないんだ」
「どういうこと……ですか?」
「ちょっと長話になるから、こっちに来て話そうか」
エリクセン殿下はそういうと、私の手を取り、腰に触れる。そう、彼がクリオと婚約する前にしてくれていたエスコートと同じだった。
あまりにもごく自然にされたので、私は椅子に座るまでそのことに気がつかなかったくらいである。頭が作動していなかったのもあるのだろう。
それでも、近距離に座られれば、嫌でも気づく。
暗に早く慣れるように、と言っているのだろう。
前世の知識でも、修道院の一日は忙しいって聞くし。ここでも『使えない』って言われないためにも頑張らないとね!
そう意気込みながら、まず気になっていた礼拝堂に足を向けた。ステンドグラスを見たい気持ちもあったが、お祈りを先にしたかったのだ。
この気持ちをどうか、汲んでくださいますように。修道院での生活がいいものでありますように、と。
そしたら、牧師姿のエリクセン殿下が礼拝堂にいたのだ。
「朝、ハイドフェルド邸で見送ってくださったのに」
どうしてここに居るんですか? クリオはどうしたんですか?
一気に込み上げてくる疑問を消化できなかったのか、それらが口から出ることはなかった。
代わりにエリクセン殿下は、いつものように温かい目で私に微笑む。
「それは俺であって俺じゃないんだ」
「どういうこと……ですか?」
「ちょっと長話になるから、こっちに来て話そうか」
エリクセン殿下はそういうと、私の手を取り、腰に触れる。そう、彼がクリオと婚約する前にしてくれていたエスコートと同じだった。
あまりにもごく自然にされたので、私は椅子に座るまでそのことに気がつかなかったくらいである。頭が作動していなかったのもあるのだろう。
それでも、近距離に座られれば、嫌でも気づく。