使えないと言われ続けた悪役令嬢のその後

第4話 誰も不幸にならない物語

「それじゃ、朝、ハイドフェルド邸で見たのは、エリクセン殿下の――……」
「弟のコルラードだよ。クリオ嬢は俺ではなく、コルラードと結婚したい。だけど、貴族としての地位は捨てたくない、と言ってきた」
「コルラード……様は?」
「ずっと俺を恨んでいたようだからね。勿論、王太子の地位を欲していたさ」

 乙女ゲーム『今宵の月は美しい?』でもそうだった。コルラードルートは最後、王太子となり……エリクセン殿下は……失脚に追いやられる。
 エリクセンルートの追加ストーリーとして用意された隠しキャラだったから、すでにアベリアは断罪された後のこと。

 つまり、コルラードルートだけど、少し違う……? いや、私が知らないだけなのかも。

「あの、エリクセン殿下は失脚させられたのですか?」
「混乱しているのは分かるが、アベリア。ハイドフェルド邸の前で会った時、コルラードは本名を明かしたか? 俺の名前でアベリアに向き合っていたはずだけど?」
「そ、そうでした。すみ……いえ、名乗ってはいませんでしたが、私が殿下と呼んでも否定しませんでした」

 私が謝るのを咄嗟にやめたからか、エリクセン殿下の手が伸びる。頭に触れると、まるで幼い頃に戻ったかのように、撫でられた。
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