使えないと言われ続けた悪役令嬢のその後
「大丈夫だ。少しずつ、コルラードと入れ替わって、市井には慣れた。仕事も少しだがしたしな。アベリアを養うくらいはできると思っている。と言い切りたいが、クリオ嬢を社交界に連れてきたリダカン伯爵を覚えているか? 魔術師の」
「はい。彼も攻略対象者の一人なので」
「しばらくの間は、リダカン伯爵が援助してくれると言っていた。彼は元々、二人の支援者だったみたいでな。今度はこちらの支援をしてくれるそうだ」

 まぁ、と驚いていると、エリクセン殿下の手が下がり、私の頬を撫でる。

「アベリア・ハイドフェルド公爵令嬢。愛している。もう王太子ではないが、俺と結婚してくれるか?」
「っ! 勿論です」

 途端、抱き締められ、そのまま押し倒された。

 持っていた鞄は床に落ち、その勢いで中身が飛び出る。そう、クリオから貰った手紙も。

 それを私が読んだのは、エリクセン殿下の愛を受け止めた後だった。

 誰かに祝福されるわけでもない、誓いの口づけは、それよりも深く長かった。けれどこれから駆け落ちをするのだから、聖母様も許してくれるだろう。
 流石にそれ以上は、エリクセン殿下も自重してくれたけど。

 それでも私にとっては嬉しかった。好きな人と結ばれる喜び。自分では掴み取れたわけではないけれど、こんな私でも求めてくれるのだから、精一杯、答えたかった。

 これから先の不安も、エリクセン殿下……いやエリクセンと共に歩めるのならば。
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