使えないと言われ続けた悪役令嬢のその後
 とはいえ、今の私はお父様の娘であって、娘じゃない、などと言えるわけもなく。今日もこうしてお小言を聞くことしか出来なかった。

 お父様の望みは、乙女ゲーム『今宵の月は美しい?』で悪役令嬢、アベリア・ハイドフェルドのキャラクター説明に出てくる、王太子の婚約者。

 けれど今の私は、王太子の婚約者ですらなかった。すでにヒロインは現れて、乙女ゲームが始まっているというのに、この体たらく。当の私でさえも嫌になってしまう現実だった。

「あんな男爵令嬢ごときに遅れを取るなど……分かっているのか! この私の屈辱感を!」
「……はい」

 一応返事はするものの、内心では呆れていた。

『今宵の月は美しい?』の結末にいちゃもんをつけられても……なのだからである。これは私ではなく、乙女ゲームの製作者側に喧嘩を売っているのと同じことだった。

 そもそもこの乙女ゲームは、ヒロインであるクリオ・シュトロブル男爵令嬢が、王太子を始めとする攻略対象者たちと恋愛をするゲーム。
 クリオが筋書き通り、王太子と婚約するのは当たり前のことなのだ。

 ただ、その前に私が悪役令嬢として立ち塞がっていないだけで……。
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