使えないと言われ続けた悪役令嬢のその後
 でも物語は進んでいく。私の意思など関係なく。ううん、まるであざ笑うかのように、私たちの前にクリオを登場させたのだ。

「始めは、使えないお前でも構わないと言ってくださったのだぞ。それを有り難がるどころかお前は、逃げるなどと……何を考えている、アベリア」
「返す言葉もありません」

 私はさらに俯いた。

 クリオが夜会に登場した日。
 彼女は攻略対象者の一人である、魔術師、リベラ・リダカン伯爵のエスコートを受けていた。
 つまり、クリオはリダカン伯爵のイベント、竜退治を終えていたのだ。けれどこれはイベントであって、攻略後ではない。

 クリオが社交界デビューをするためには、リダカン伯爵の協力が必須なのだ。そう、社交界にはエリクセン殿下の他に、攻略対象者がいる。殿下の側近と私の兄が。

 その誰かを狙ってやってきたに違いない。
 だから私は逃げたのだ。クリオが、エリクセン殿下に近づく前に……近づく姿さえも見たくなくて。

 二人が並んだ姿を想像した途端、我慢できなかったのだ。
 きっと、ゲームのパッケージイラストよりも素敵に違いない。邪魔者の私がそこにいてはいけない。

 警告音が頭の中で響き渡っていた。
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