使えないと言われ続けた悪役令嬢のその後

第2話 悪役令嬢として

 エリクセン殿下とクリオが夜会で出会ってから数日後。

 二人の仲は急速に深まっていった。
 クリオが王宮に呼ばれた、と耳にし。エリクセン殿下のエスコートで夜会に出た、と聞き。終いにはエリクセン殿下の髪の色である、黄色いドレスをクリオに贈られたらしい。

 私も以前、(あお)いドレスを貰ったことがある。エリクセン殿下の瞳の色。私には青が似合うから。「まるでカンパニュラみたいだ」と褒めてくださった。
 社交界のカンパニュラと呼ばれた、本来の悪役令嬢、アベリア・ハイドフェルドのようだと言われた気がして、嬉しいような悲しいような複雑な気分になったけれど。
 それでも嬉しかったことには変わらない。

 あぁ、ゲームの中のアベリアも、こんな気持ちだったのかな、と思った。アベリアほど、エリクセン殿下に執着していたわけではないのに、こんなにも傷ついている自分がいる。

 けれど私には、二人を邪魔する勇気も資格もなかった。だって私はエリクセン殿下の婚約者ですらなれなかったんだから。

 すでに二人の障害として立ち塞がる悪役令嬢は、悪役令嬢としての機能を果たしていなかったこともあるのだろう。
 とんとん拍子に話は進んでいき、まるで待っていたかのように、二人は婚約することとなった。
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