使えないと言われ続けた悪役令嬢のその後
 幸いなことに、婚約者ですらなかった私は、断罪されることも、ざまぁされることもなく、今に至る、というわけである。
 お陰で自宅謹慎という名の、お父様のお小言を毎日聞く、という罰を受けていた。

「そんなお前がいつまでもここにいると、私の心労が増える一方なんでな。アベリア。お前を修道院へ行かせることにした」
「え?」

 断罪もざまぁもされていないのに、修道院? つまり追放EDってこと? 何で? そんなに家にいることはいけないことなの?

 それも、悪役令嬢としての義務も果たしていないのに……。
 いや、果たしていないから、この世界『今宵の月は美しい?』が私に罰を与えようとしている……の?

「ま、待ってください。修道院でなくても、領地に行くことはできないんですか?」
「その選択肢もあった。しかし社交界のシーズンになったらどうする? 領地でも噂になるぞ」
「……修道院に行っても同じことです」

 ここまで言ってから、私はハッとなった。

「だからお前は頭が足りないのだ。どの道、同じように言われるのであれば、修道院の方が良い。閉鎖的な場所というのもあるが、日々修練に励み、精神を鍛えて来い。領地に行っても無駄に過ごすだけだ」
「お、父様……」

 『使えない』私に、まだ望みを?
 そう思った次の瞬間、冷たい声を投げかけられてしまった。
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