使えないと言われ続けた悪役令嬢のその後
「お前の荷物はメイドに用意させた。明日には出て行くように。いいな」
「そ、そんな突然……!」
「私の心労だと言っただろう。それにもう決まったことだ! さっさと自室に戻って明日に備えろ」
「お父様!」

 再び突き放され、私は叫ぶしかなかった。
 けれど返って来たのは威圧的な視線だった。この世界に生まれて、お父様の娘として過ごした十八年間。この意味を知らない私ではない。

『黙って言うことを聞きなさい。この私に逆らうことは許さない』

「……分かりました」

 しかし、すぐには動けなかった。するとお父様は椅子から立ち上がり、私に背を向ける。

 出て行け、と言葉よりも、無言の圧力の方が悲しくて、怖かった。

 恐らくこの案件は、私が反論したところで覆せるものでは、そもそもなかったのだ。お父様はこの国で一つしかない公爵家の当主、ハイドフェルド公爵なのだから。

 それでも、それでも、と思ってしまう。

 転生したのが幼い頃でなければ。そう、婚約中だったら良かったのに。そうすれば、お父様の期待に少しでも応えられたのかもしれない。
 ううん。中身が使えない私なのだから、結果は同じだったと思う。

 私は胸が締め付けられる思いで、お父様の執務室を出て行った。
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