隣のイケメン執事はちょっと強引 ~恋をするのが禁止な私を誘惑しないで~

第三話 食事を食べさせられた

〇学校・屋上

N「昼休み」

莉子「(怒って)ちょっと君!」
陽斗「(笑顔で)はい、何か御用でしょうか?」

莉子「さっき教室で、私と机をくっ付けてご飯食べようとしたでしょ?」
陽斗「一緒に食事を頂くという話だったので、相応の対応をさせていただきました」
陽斗「これは普通のことだと思うのですが……」

莉子「わかってなーい!」

莉子、陽斗に詰め寄り早口で、

莉子「君にクラスの女子の熱視線が集まってるの感じてる?」
陽斗「いつもはご当主様が人の視線を集めますので、その後ろにいた私もそういった感覚は等に麻痺していまして……」

莉子「ゆくゆくはクラスだけじゃなく学校中の注目の的になって」
陽斗「それもいつもご当主様が……」

莉子「とにかく! そんな人と仲良くしていると私に学校中から敵意が降りかかってくると思うの! いい迷惑なの!」
陽斗「申し訳ありませんでした」

莉子「はぁはぁ……君の察しが良くて助かったけど――」

〇(回想)学校・教室

陽斗、莉子の机に自分の机をくっ付けようとする。

陽斗「小泉さん、一緒に昼食を――」

莉子、その発言を無視。
鞄を持って教室に出るが、その時ワザとらしく腕を上げて欠伸をする。
陽斗、その動作を見逃さない。
その後すぐに、陽斗の机の周りにクラスの女子が集まり始めて、

女子A「早乙女く~ん、ご飯一緒にたべよっ!」
女子B「どこに住んでるの~? 連絡先教えて~」
女子C「放課後ひま~? みんなで遊びに~」

陽斗「すいません皆様」
陽斗「実は今日のお昼休み担任の先生に呼び出されていることを思い出しまして」

陽斗、鞄を持って急いで莉子の後を追いかける。

女子A「早乙女くん、鞄もって先生の所に行くの? 変なの~」

(回想終わり)

陽斗「(笑顔)ご当主様の些細な合図は見逃せない性質でして」

莉子「私はご当主様じゃないし」
莉子「それにほら、また敬語使ってはなしてる!」

莉子(って、こんなこと一々注意する私って真面目か!)
莉子(……真面目だった)

陽斗「融通が利かないことはご当主様にもよく注意されてまして……」
陽斗「普通の高校生みたいに話すことがこんなに難しいとは……」

莉子「(少し顔が赤い)でもさっきは、普通に話せたよね? 断ってもって~」

陽斗「あぁ、あれですか?」
陽斗「先ほどはご当主様が遊んでいたゲームのキャラクターの真似をしてみたのですよ」

莉子「へぇ……そうなんだ(どんなゲーム?)」

陽斗「それよりそろそろ食事にしませんか?」

陽斗、キャンピングマットと重箱のお弁当、水筒を用意する。
莉子、少しあきれ顔で

莉子(高校のお弁当でここまでするか普通……)

陽斗「(満面の笑顔で)さぁ食べましょう、今日は小泉さんの分も作ってきていますから」

莉子「いえ、私は自分の分がありますから」

莉子(彼にこれ以上借りを作るわけにはいかない)
莉子(今日一緒に昼食を取るのだって、保健室に運んでもらったお礼?みたいなものだし)
莉子(とりあえず、昨日の義理を返せれば……)

莉子、自分の鞄から昼食を出す。
昨日と同じく見た目の悪いおにぎりとビタミン剤。

陽斗「あっ、私の予想した通りの昼食ですね」

莉子「良いでしょう。約20円のおにぎりが二つに約10円のビタミン剤が一つ」
莉子「計50円の考えられた食事。我ながら素晴らしい節約」

陽斗「そんなわけありませんよ。昨日倒れたばかりでしょう」
陽斗「実は今日も同じかと思いまして、是非とも一緒にお食事を取りたかったのですよ」

莉子(ぐぬぬ、そういわれては……)

陽斗「準備が終わりました。さぁ一緒に召し上がりましょう」

莉子「(小声で)そういわれてもこれ以上借りを作るワケには……」

陽斗「借り? そんなものより健康の方がよっぽど大切ですよ」

莉子(確かに、とても美味しそうな料理の数々)
莉子(だけどここで甘えてしまえば、借りを作る以上に――)
莉子(今の食生活とのギャップがぁあああ)

莉子N「※普段は貧乏食なので口が超えることを危惧している」

莉子、中々その場から動かずこう着状態に、

陽斗「では少々ズルいやり方になりますが、仕方がありませんね」

陽斗、キャンピングマットの上で正座をする。

莉子「ちょっ!?」

陽斗「いまより食べて頂けるまでこの場所を動きませんよ?」

莉子「なんて強引な……」

陽斗「(笑顔で)割と大切なんですよ。ご当主様のわがままを正しい方向に導かないといけない時には」
陽斗「さぁ早くした方がよろしいかと? お昼休み終了まで残り15分を切りました」
陽斗「もし昼休みが終わった時にこのままの状態だとするならば」
陽斗「二人揃って教室に帰ることになりますよね?」
陽斗「時間外に二人きり。さぁ周りにどう映るでしょう」

しばしの沈黙の後、莉子うなだれた様子でキャンピングマットに正座する。

莉子「……負けました。でも一口だけですよ?」
陽斗「(笑顔で)ささっ、どうぞどうぞ美味しいと思いますよ」

莉子、取り分けられた料理を食べる。

莉子「(満面の笑みで)美味しい……!」

陽斗「(笑顔で)私はこれが見たかったのですよ」
陽斗「仕える方の心からの笑顔が何よりも嬉しく思うのです」
陽斗「さっき小泉さんが借りとかいってましたが――」

莉子「美味しい! 美味しい!」

陽斗、にこやかな笑顔で食事を取り分ける。
莉子、夢中で食事をしながら、

莉子N「久しぶりな豪華な食事は、それはそれは私を魅惑する悪魔的な美味しさで……」
莉子N「私の中で何かが壊れそうな予感が――」

莉子(って、よく考えれば私だけ先に教室に帰ればよかったんじゃ……)

莉子、陽斗の嬉しそうな顔をみる。

莉子N「ううん、帰らなくて良かった」
莉子N「善意って受け取るだけでもこんな笑顔が見られることもあるんだから――」
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