しあわせのレシピブック

シュトロイゼルとエレの日常ぱーとふぉー

 嵐のように場を荒らして去っていったニュイとルージュ。
 それから、エレが落ち着きを取り戻した頃でした。
「ロイせんせー!」
「こんにちは、ロイ先生」
「そう引っ張らずともっ、ソルティの行くところならどこにでもついてい、く、苦しいくるしい首がしまる」
「いやだなあ。しめてるんですよ」
 賑やかにやってきたのは、ソルティさん、しゅーちゃん先生、ディッシュ様のお三方です。
 お行儀よく礼をしたしゅーちゃん先生と。ディッシュ様を引きずりながら現れたソルティさん。
 首根っこを掴まれながらずりずりと引きずられているディッシュ様を見るに、恐らくはまたソルティさんにとっての失言をしたのだろうと、想像に難くありません。……まあ、それでも連れてきている時点で、ソルティさんは甘いというか……。惚れた、弱味……。
 浮かびかけた言葉を振り切って。
「はは、元気そうだね」
「元気そう、で良いのでしょうか……」
 エレは普段通りを装いました。なんだか、それは盛大なブーメランになるような気がしたのでした。何故かはよくわかりませんでしたが。
「ソルティくん、ラディッシュくん、ディッシュくん。今日はどんな用事かな?」
「そうそう! 今日掘り出してきたものがあるんだけど、一緒になにか調べてくれないかなって」
「ニュイくんとルージュちゃんが、ロイ先生は一仕事終わったところだって言ってたから、行くだけ行ってみようってなったんだ」
「そういうことだな。……げほげほ」
 ようやくソルティさんの腕から解放されたらしいディッシュ様は咳をしながらも、「……ソルティの腕……」とどこか恍惚とした表情で呟くのです。
「もう、兄さんは勝手についてきただけでしょ? 騎士団の仕事も放り出して……」
「大丈夫だ。何故ならこの世界はとても平和だから」
「そんなんで本当にいいの騎士団」
「いいんだ」
 呆れ顔のソルティとしゅーちゃん先生に、ディッシュ様はどこかの王子様のように自信満々で返します。
 まあ、この国はいつもこんな調子なので、今さら何を言っても無駄な気は、エレ以外のひとびともしているようでした。証拠のように、シュトロイゼル先生も、微かに苦笑いを浮かべるだけで、仕事に戻るように言うこともしません。
 ……しかし、今のエレにはそんなことよりも気になることがあったのです。
「掘り出しもの……」
「エレくん?」
「ああ、そういえばエレはこれが気になるんだっけ?」
 ソルティさんが手に持った箱から取り出したのは、古びた、分厚い本でした。
「はい。その本、書かれてる文字はわからないのですが……」
 自分たちの使っている文字とは違う文字。でも、けれど、エレにはなんとなく、わかったのです。わかってしまったのでした。
「それ、たぶんなのですが、「料理の作り方」が書かれているのだと思うのです」
「料理の」
「作り方……?」
 ソルティさんとしゅーちゃん先生が顔を見合わせました。
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