しあわせのレシピブック
料理の道具
「そう、ですわよね……」
沈んだエレの声が、キッチンに落ちました。
シュトロイゼル先生のお家に着いて、フルーツと野菜を見せました。シュトロイゼル先生も美味しそうだと喜んでくれて、クルールも早く食べたいと言ってくれたのです。
「では、キッチンをお借り出来ますか?」
「ん……ああ、もちろんだよ」
シュトロイゼル先生が少し不思議そうな顔をしたところで、気付ければ良かったのです。フルーツと野菜を持って、キッチンへ。……エレの動きが止まりました。
「あ……」
エレはスムージーでも作ろうかと思っていました。よく自分でも、ソルティさんが掘り出したすり鉢とすりこぎで作っていたからです。
だから、つい忘れていたのです。
「調理器具が……ないのですね……」
この国、いえ、この世界は魔法が中心の社会を構成しています。
魔法を日常的に使うあまり、手作業の道具は廃れています。それを忘れてしまうくらいには、最近のエレの周囲は優しかったのです。
「エレくん……」
シュトロイゼル先生が心配そうな声でエレの名前を呼びます。エレは俯いたままです。
困ったという表情でシュトロイゼル先生はおろおろするばかり。クルールも上を見上げたまましっぽをたしたしと動かすことを繰り返しています。いつもなら、それでエレは笑顔になっていたからです。
しかし、エレは顔を上げません。シュトロイゼル先生とクルールが困った顔を付き合わせました。
と、
「そうですわ!!」
「わ」
「ん?」
急にエレが大声を上げました。その表情に暗い色はありません。むしろ、輝くような希望が宿っていました。
困惑するシュトロイゼル先生とクルールを他所に、エレは笑顔で言います。
「そうです、無いなら、作れば良いのです! これから料理もしていくのですから、いずれぶつかっていた壁じゃありませんか!」
「え、エレくん?」
「シュトロイゼル先生!」
エレは満面の笑みでシュトロイゼル先生を見つめます。
「作りましょう! 料理のための道具!」
沈んだエレの声が、キッチンに落ちました。
シュトロイゼル先生のお家に着いて、フルーツと野菜を見せました。シュトロイゼル先生も美味しそうだと喜んでくれて、クルールも早く食べたいと言ってくれたのです。
「では、キッチンをお借り出来ますか?」
「ん……ああ、もちろんだよ」
シュトロイゼル先生が少し不思議そうな顔をしたところで、気付ければ良かったのです。フルーツと野菜を持って、キッチンへ。……エレの動きが止まりました。
「あ……」
エレはスムージーでも作ろうかと思っていました。よく自分でも、ソルティさんが掘り出したすり鉢とすりこぎで作っていたからです。
だから、つい忘れていたのです。
「調理器具が……ないのですね……」
この国、いえ、この世界は魔法が中心の社会を構成しています。
魔法を日常的に使うあまり、手作業の道具は廃れています。それを忘れてしまうくらいには、最近のエレの周囲は優しかったのです。
「エレくん……」
シュトロイゼル先生が心配そうな声でエレの名前を呼びます。エレは俯いたままです。
困ったという表情でシュトロイゼル先生はおろおろするばかり。クルールも上を見上げたまましっぽをたしたしと動かすことを繰り返しています。いつもなら、それでエレは笑顔になっていたからです。
しかし、エレは顔を上げません。シュトロイゼル先生とクルールが困った顔を付き合わせました。
と、
「そうですわ!!」
「わ」
「ん?」
急にエレが大声を上げました。その表情に暗い色はありません。むしろ、輝くような希望が宿っていました。
困惑するシュトロイゼル先生とクルールを他所に、エレは笑顔で言います。
「そうです、無いなら、作れば良いのです! これから料理もしていくのですから、いずれぶつかっていた壁じゃありませんか!」
「え、エレくん?」
「シュトロイゼル先生!」
エレは満面の笑みでシュトロイゼル先生を見つめます。
「作りましょう! 料理のための道具!」