憧れの街で凄腕脳外科医の契約妻になりました。


「会えたらお願いしてもいいんじゃない?」

 まるで芸能人のサイン会にでも行くような気持ちになっていた。

 いけない、私はまた莉緒香を蔑ろにして羽倉先生ばかりになっていた。これじゃあ莉緒香も良い気はしないだろう。そう思い、

「莉緒香、なにか欲しいものある? 結婚したんだし、お祝いさせてほしい」

 莉緒香に何が欲しいか聞くと、莉緒香は「亜矢、仕事辞めて大変なんだし無理しないでよー」と困ったような笑みを浮かべた。

「大丈夫! 私が仕事を辞めたのと、莉緒香の結婚は全く関係ない! お祝いさせてほしい!」

 全然大丈夫ではないが、つい頑なになる。そんな私に根負けした莉緒香は、「じゃあ、今日のBarをご馳走してもらおうかな!」と、微笑んだ。

 夜までの時間、ドライバーの運転でベリが丘を一周した。

 街はテレビの画面越しで見た光景と同じだ。けれど、実際の方がとても輝いてみえる。

 ビルや建物も高い。空気も美味しい。自分が今いる場所が日本ということを忘れてしまいそうな、そんな豪華な街並みだった。


< 10 / 229 >

この作品をシェア

pagetop