憧れの街で凄腕脳外科医の契約妻になりました。
「中へお入り下さい」
扉を開けていただき、和登さんの後を追うように玄関に入ると、
「あら、いらっしゃい。まあ、可愛いお嬢さんね。入って」
玄関まで出迎えてくれた人はすぐにお義母さんだと言うことが分かった。和登さんに面影がある綺麗なお義母さん。肩までのゆるふわな髪型が凄くよく似合っている。
「ありがとうございます。お邪魔します」
靴を脱ぎ、出されたスリッパを履いてリビングへと向かう。段差が無く、手すりが付けられていて、老後の生活がしやすそうな、とても足に優しい造りになっていた。
リビングへ向かうと、シャンデリアが天井から吊るされており、一瞬ホテルに戻ってきてしまったかとさえ思った。
……しまった、私、手土産何も持ってきていない。
キッチンで使用人の女性と一緒にお茶を準備してくれているお義母さん。その隙に和登さんに手土産が無いことを相談する。
「和登さん、私手土産何も持ってきてないです」
「ああ、大丈夫。むしろ俺の母さん、手土産欲しがらない人だから事前に『何も持ってこないで』って言われてたんだ」
そう言われるも全然気持ちが落ち着かない。
ふかふかのソファーに座らせてもらっているけれど、落ち着かない私は全然気が休まらない。