憧れの街で凄腕脳外科医の契約妻になりました。
和登さんは私の言葉にうんともすんとも言わない。一通り悩んだ後に「うん、言わない」と、頷いた。
……良かった。
親との縁を切ってまで私との結婚を押し通した和登さんだから『公表する』と言いかねなかった。
「院長には入籍の報告はするけど、亜矢がもし、脳に何かしら異常があったときに俺は手術に入れなくなるから。とりあえず、検査が終わるまでは言わない」
この和登さんの言葉で仁田先生は「そう言うと思ったー」と笑った。柳先生は一人置いていかれている感じで、
「え? え? 世の女性の心配をしてるんではなく!?」
と、慌てている。そんな柳先生に、
「はあ? 世の女性って、羽倉先生はアイドルではないですよ? 柳先生、バカですか?」
と、鋭い言葉を返す仁田先生。
柳先生も負けじと言い返す。
「でも! 実際にベリが丘総合病院は羽倉先生の顔の良さで成り立ってるといってもいいでしょう!?」
「んなワケないでしょ! 病院を夜の店と一緒にしないでもえます? 柳先生キモイですよ。だからいつまでも彼女できないんですよ?」
「な……っ!? 仁田先生にだけは言われたくありません!」
仁田先生と柳先生はバチバチに喧嘩を始めてしまった。そんな二人を見ながら、
「というわけで、僕の結婚は内緒でお願いしますね、柳先生、仁田先生」
――と、どういうわけか和登さんはそのまま話を進める。