憧れの街で凄腕脳外科医の契約妻になりました。
和登さんの胸に顔を埋めると、ドクドクと鼓動が聞こえてきた。和登さんの鼓動はとても落ち着く。
いつの間にか、そのまま一緒に眠っていた。
目を覚ますと和登さんは優しい眼差しで私をジッと見つめていた。
ビックリして飛び起きると、和登さんは私を抱き寄せた。
「亜矢、おはよう。毛布、かけてくれてありがとうね。それに、亜矢がくっついて寝てくれたから温かかったよ」
「私も和登さんとくっついて眠ったので、すごく温かかったですし、よく眠れました」
和登さんは「良かった」と頷いた。
和登さんといると、心臓がいくつあっても足りそうにない。
その後、ホテル内のバイキングで朝食を食べた私達は、不動産屋に移動し、中へと入る。
電話で話した物件を事前に調べてくれていたらしく、複数枚物件情報を印刷してくれている紙を、私と和登さんの前に差し出してくれた。
どれも豪邸のような物件ばかりだ。
和登さんのご両親の家や、仁田先生のご自宅も凄かったけれど、ノースエリアは本当に豪華なお家ばかりが建て並んでいる。
「あんまり広くても部屋のお掃除とか……管理しきれなさそうなので、こんなに広くなくてもいいです」
部屋数がいくつあるんだと思うほどの造りだ。さすがにこんなに広い家は管理しきれない。プールや中庭もなくていい。できれば、普通の広さの家でいい。
やんわりと断ると、不動産のお兄さんは困った顔を見せて私に問いかけた。
「失礼ですが、使用人はいらっしゃらないのですか?」
ビックリするような言葉が飛び交う。
ノースエリアに住んでいる人達は、使用人がいることが普通とでも言われている気がした。
「い、いえ! そんな、めっそうもございません! 家の管理くらい私がきちんとしてみせます!」
あわてふためく私を見て、和登さんが口を開いた。
「ちょうど越す時に一緒につける予定。ほら、羽倉家の使用人をされていた人が、俺達の新居で働いてくれるって父さんが言っててさ」
「え!? あ……」
羽倉家の使用人。すぐに分かった。
……あの、私を目の敵にしていた女性だ。そして、和登さんに好意を寄せている。