憧れの街で凄腕脳外科医の契約妻になりました。
お義父さんと話していた内容はそのことだったんだ。
和登さんは不動産のお兄さんに『これのもっと詳しい資料お願いします』と、お願いしている。
あの人とは仲良くなれそうにない。
使用人なんていらないのに……
「和登さん、私、和登さんと二人だけがいいです」
「それは俺もだよ。でも、今は亜矢には無理させたくないし、掃除とか、それこそ頭に物が当たったり転んだりしたら大変だろ」
「ね、検査が終わるまでの間だけでいいから」と言われ、和登さんがこんなに心配してくれるなら、と、渋々頷く。
けれど、検査が終わるまでの期間ということは、あの女性は私達が離婚するまで使用人として働くということだ。
新居に越したらもう私は和登さんと二人きりで過ごせない。
「……分かりました。ですが、あの女性は和登さんを……」
「…………ん?」
「いえ…………、なんでもありません」
『和登さんを好いている』とは言えなかった。あの女性はまだ和登さんに何も言っていない。
確信がないのに言うのは良くない。
和登さんは私の頭をポンポンと撫でた。
「亜矢が言おうとしていたことは分かるよ。俺もそこまで鈍くはないし、あの使用人が亜矢のことをキツく睨んでいたことも知ってる。俺、仕返ししたいんだよね。使用人を使ってまで徹底して壊そうとする羽倉家に」