憧れの街で凄腕脳外科医の契約妻になりました。


「そ、そうですか……」

「咲村様から和登様にお願いしていただけないでしょうか。このままでは私は住む場所もなく、途方に暮れてしまいます」

「……ですが、和登さんがそう決められたのなら私がどうこう言う権利はありません」

「では、咲村様は私が途方に暮れてもいいとおっしゃるのですか!?」

 話が飛躍しすぎているし、そこまでは言っていない。きっと赤間さんは今、自分のことしか考えられなくなっている。

「そうは言っていませんが、住む場所はどうとでもなるんじゃないですか? 元は和登さんのご両親の使用人をされていたくらいですし」

 そう質問すると、赤間さんは首を横に振った。

「羽倉家ではなく、和登様のお住いで一緒に生活をするように言われましたので、もう羽倉家には私の居場所はございませんし、既に新しい使用人を雇っておられます。私が奥様のお気に入りのお皿を一枚割ったばかりに激怒されてしまいました……」

 赤間さんは、何故、羽倉家から追い出されたのかを説明してくれた。


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