憧れの街で凄腕脳外科医の契約妻になりました。


 ◆


 和登さんと連絡を取りながら、引っ越しの当日までやり残したことなど、赤間さんの力を借りながらなんとか終えた。

 後はベリが丘に行ってまだやる事はたくさんだ。

 赤間さんと一緒にいることで、赤間さんの人間性も分かってきた。

 赤間さんは元々母子家庭育ちで、少しでも母親に楽をさせてあげたくて、富裕層が集うベリが丘で住み込み家政婦兼、使用人をしていると話してくれた。

 そして和登さんのご両親にも娘のように良くしてもらっていると教えてくれた。赤間さんが酷い扱いを受けていなくてよかった。

 引っ越しはほとんど実家に送らせてもらう物ばかりで、新居に運び出すものはとても少ない。ダンボール三箱で済んでしまった。

 引っ越しの当日にはお母さんとお父さんが見送りに来て、「このくらいしかできないから」と、退去費と引っ越し費用を出してくれた。

 大丈夫と否定はしたものの、「アンタ、全財産二十万しかないんでしょ! なんでもっと貯めとかないの!」と怒られたが、それでも莉緒香のことを話すことはできなかった。

 親の善意に感謝しつつ私の荷物を持つ赤間さん。

「赤間さん、よかったらバスで向かわない? タクシーはその、お金たくさんかかっちゃうから」

 バスで行こうと提案してみるが、

「和登様はタクシーで来てほしいとおっしゃっておりました」

 ――そうだった。

 和登さんは私が今日越してくるからと、仕事を休んで待ってくれている。


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