憧れの街で凄腕脳外科医の契約妻になりました。
渋っていると、「亜矢様に何かあったら困るのは私です!」と、強制的にタクシーで向かうこととなった。
一時間半ほどかけてベリが丘に着き、新居へと到着した。外では和登さんが待っていてくれて、先にタクシーから降りると、和登さんは優しく抱きしめてくれた。
「ごめん、一人にして。お疲れ様」
優しい声で語りかけてくる。たとえ今いる場所が家の前だとしても公共の場で抱き着くのは恥ずかしい。
そっと和登さんから離れる。
「あの、外なので。赤間さんにもタクシーの運転手さんにも見られてます!」
和登さんにそう言うと、和登さんはまだ乗っている赤間さんに分厚い茶色の封筒を差し出した。
「これはなんでしょうか?」
赤間さんが和登さんにふいに尋ねる。
「亜矢を無事に送り届けてくれてありがとうございました。バイト代といってはなんですが、受け取ってください。あと、やはり住む場所と働き口は自分でどうにかしてください」
話を聞こうとしない態度で、赤間さんを追い払おうとしていた。