憧れの街で凄腕脳外科医の契約妻になりました。

 赤間さんは、和人さんから受け取った茶封筒の中身を確認し、

「こんな大金を私にお支払いするくらいでしたら、亜矢様にもう少し高級な指輪を差し上げた方がいいのでは?」

 ーーと、皮肉めいたことを言い出した。

 これ以上仲が悪くなられても困る。

 赤間さんに「私がこの指輪が欲しいって言ったので!」と言いつつ、和登さんには「赤間さんを追い返さないで」とお願いした。

 今追い返しても、赤間さんは羽倉家に戻る手段があるだろう。けれど、赤間さんが納得するまで一緒にいてほしい。一緒にいて、私と和登さんのことを羽倉家のご両親に伝えてほしい。

 いつか、心から受け入れてくれるときがくることを信じて、今は本音でそう思う。

「……やっぱり赤間さんから言いくるめられた?」

「言いくるめられたとか、そういうんじゃないんです。赤間さんには気が済むまでここにいてほしいんです」

 和登さんは最初っから赤間さんを目の敵にしているようで、私に対して納得がいかないと言うような、不満げな表情をした。

「亜矢は良い子だからそう言い出すんじゃないかって分かってた。言っとくけどこっちにはエリート弁護士が味方についてるんだから、亜矢に何か仕出かしたらタダじゃ済まさないけど、それでも赤間さんはここで働きたいの?」

 赤間さんにつられて、一言二言皮肉めいたことを言う和登さん。

 赤間さんが私に何かすると決めつけている。


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