憧れの街で凄腕脳外科医の契約妻になりました。
赤間さんがいることで最初はぎこちなかった生活も、時間が経つとどんどんとその感覚は薄れてきた。
「私、赤間さんがいてくれて良かったです。こんな広い家に一人じゃきっと、寂しくて絶えれないです」
そう言うと、赤間さんは「そう言っていただけて良かったです」と、こころなしか微笑んでくれたような気がする。赤間さんは私にとって今では家族同然だ。
赤間さんと毎日家中をピカピカにしながら、お喋りしたり一緒に買い物に出かけたり料理をしたりとまったりした時間を過ごし、和登さんがお休みの日はベリが丘の街に和登さんと二人でお出かけしたりもした。
いろんなところに行き、素敵な物をたくさん目に焼き付けた。
ずっとこんな時間が続いてほしい。そう願いながらも時間は過ぎていき、気づいた時には半年間があっという間に過ぎてしまっていた。
今日は脳ドック当日。
念の為に昨日の夜九時からはご飯を抜いている。
楽しい時間はすぐに過ぎるということは本当らしい。この検査が終われば私達は離婚だ。全然実感が沸かない。もう和登さんと一緒にいられないと思うと、寂しくて涙が出てきた。
「亜矢様、ご準備はできましたか? ……大丈夫ですよ、私もついておりますので」
検査のことが不安で涙を流していると思われてしまった。赤間さんには、半年しか和登さんと一緒にいられないということは伝えていない。これ以上心配かけたくない。
この検査が終われば、和登さんだけじゃない。赤間さんともお別れだ。そう考えると、心にぽっかりと、大きな穴が空いてしまったような感覚になる。
検査時間は三時間ほどで済むらしく、泊まり込みもないらしい。事前に送られてきていた資料と同意書を鞄の中に入れる。