憧れの街で凄腕脳外科医の契約妻になりました。
「ま、待ってください。最初は奥様も反対されてらっしゃいましたが、今は『もう、好きになさい』という感じで受け入れてくれているのですよ。むしろ、私と仲良くしてくださる亜矢様を気に入っておられるようにも見えます。私、母子家庭で家が貧しく、加えてこんな可愛げがない性格なもんまで、友達すらいないので。亜矢様が私のことを『友達』と言ってくださったことが嬉しかったのですよ」
いつも淡白な赤間さんの顔色が、どんどん真っ赤になっていくのを感じる。赤間さんは立ち止まり、涙をハンカチで拭った。
「私も赤間さんと出会えて、一緒に生活できてよかった。とても楽しかったです」
「離婚は、しなくてはいけないのですか? こんなにお二人仲がよろしいのに……」
「はい。結果がどうであれ最初に決めていたので。今のお家は和登さんが所有しますので、私は地元に帰らせて頂くことになります。赤間さん、和登さんをよろしくお願いします」
深々と頭を下げると、
「私は亜矢様についていきますよ! 半年ではありましたが、お給料もたくさん頂けましたし、生活には当分困りません」
赤間さんはにこやかに笑った。