憧れの街で凄腕脳外科医の契約妻になりました。
12.俺が医者でいる意味(和登side)
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結局俺は亜矢の脳ドックの担当になることはできなかった。
仁田先生から診察室に呼ばれた亜矢。
すぐそこで亜矢は脳ドックの結果の説明を受けている。気になるが、ここで盗み聞きをしているわけにもいかない。
外で待っている小川先生に「亜矢をよろしくね」とだけ告げ、俺は脳外科の医局室へと戻った。
術後のカルテを打ち込むんでいると医局室のドアが開いた。「戻りましたー」と、欠伸をしながら、仁田先生が戻ってきた。
「仁田先生……どうでした!?」
「亜矢ちゃんにはMRIとMRAの画像データーをCD-Rに入れてお渡し致しましたので、帰られてから確認された方が良いかと。最終的な診断結果は後日届きますし」
いつもなら聞いてもいないのに患者さんの話をしてくる仁田先生だが、今日は頑なに話そうとしない。その様子を見て俺は何かあるんだなと察した。
「……そうですか、今日はありがとうございました。お疲れ様です」
つい、何も悪くない仁田先生にそっけない態度を取ってしまう。こうなるかもしれないことは覚悟していたのに恐怖で手が震える。