憧れの街で凄腕脳外科医の契約妻になりました。
「……答えられません」
感情も何もなさそうな亜矢の目に、まるで俺は映っていないような感じだった。
この半年間、俺は俺なりに全力で亜矢を愛した。けれど、亜矢はそれでも俺を好きにはなれなかった。こんなに苦しいことは、多分もうこの先ないだろう。
「わかった……これは受け取るね。でも、最後に。今日の脳ドックのCD-Rを仁田先生から渡されたと思うんだけど、それを見せてくれる?」
そう尋ねると亜矢は鞄の中からCD-Rを取り出し俺に「どうぞ」と、差し出してきた。
「今、ここで見てもいい?」
「はい」
亜矢から許可は出たため、パソコンを持ってきて亜矢の目の前で脳画像に目を通す。
脳の血管に瘤がある。間違いない、亜矢も未破裂脳動脈瘤を患っていた。
だが、問題は場所だ。なんでこんな難しいところに脳動脈瘤ができてるんだ。これじゃあ通常の手術は困難だ。
「……仁田先生から診断結果は聞いた?」
「はい。私も祖父と同じ動脈瘤があるとのことでした」