憧れの街で凄腕脳外科医の契約妻になりました。
「…………うん」
どうにかしたい。けれど、俺から『手術をさせてほしい』なんてあまりに非常識かもしれない。
だって亜矢は好きでもない俺との結婚生活を半年間、きっちり耐え抜いてくれたんだから。俺にオペをされたくないかもしれない。
けれど、俺は亜矢を治したい。俺達が例え離れ離れになっても、亜矢にはこの先健康で長生きしてほしいから。
発生場所の位置が悪いという、簡単な言葉で終わらせたくない。どう言おうか悩んでいると亜矢が口を開いた。
「仁田先生から私の手術が厳しいと言われました。ですが、和登さんがもし大丈夫でしたら手術をしていただけないでしょうか」
亜矢は俺にまた、深々と頭を下げた。
「……いいの?」
「はい。私はテレビに映る羽倉先生がとても輝いて見えて、よかったら羽倉先生に……お願いしたいです」
亜矢は俺ではなく、医者としての羽倉和登を求めている。
それでも、求められることがこんなに嬉しいなんて。亜矢に見えないようにこっそり目に溜まった涙を拭いた。
「うん。治すよ。そのために俺は医者になったんだから」
俺はもう大切な人を失いたくない。その一心で医者になった。
亜矢は絶対に死なせない。
絶対に俺が治す。