憧れの街で凄腕脳外科医の契約妻になりました。
『つり合ってない』その言葉が酷く胸に突き刺さる。
羽倉先生はただ単にお爺ちゃんのことを話したくて私と連絡先を交換したいだけなのに、まるで私が羽倉先生を狙っていたみたいな言い方をされ腹が立つ。
結局カクテルを飲むこともご飯を食べることもせず、お会計の二万円は莉緒香がクレジットで支払った。
お店を出て莉緒香に先ほどのお会計分のお札を取り出す。
「……莉緒香、これ。クレジットで支払ってくれてありがとうね」
莉緒香の手に握らせると莉緒香は私を睨んだ。そして、手に握らせた二万円をぐしゃっと握り潰した。
「……足りない」
「え?」
「亜矢のせいで超気分悪い。迷惑料」
「ーーめ、迷惑料?」
「元々結婚祝い買ってくる予定だったんでしょ!」
莉緒香は私が手に持っていた財布を取り、入っていた三十万円の札束を引き抜いた。
「何か買ってくれる予定だったんだとしたら、私きっと高いもの頼んでたと思うし、これで許してやるわよ」
そう言って莉緒香は専属の運転手に電話を掛け、車が到着すると私に乗るように促した。
お金もすっからかんだし、莉緒香こんなに怒っているのに、一週間一緒にいても大丈夫なんだろうか。
モヤモヤする。この一週間一緒にいても楽しくないことだけは分かる。