憧れの街で凄腕脳外科医の契約妻になりました。


 『あんな胸糞な光景』

 それは私にも原因がある。「分かりました。お見苦しいところをお見せしてしまって失礼しました」と謝罪しながら、渡された札束を財布の中に閉まった。

 女の先生は優しさで私に差し出してくれているのに、私の態度は何様なのだろう。

 今の私はどうにかしている。

 また、泣きそうになっていたところを、女の先生は素早く気づいた。

「違うの! 勘違いしないでほしいんだけど、亜矢ちゃんは全然悪くないからね! 私はただ、あの化粧が濃いセレブ気取りの友達が許せないだけだから!」と、私にフォローを入れつつ慰めてくれた。

 麻酔科の先生の「よし! それじゃさっきのBarに戻って飲み直しましょうか、仁田(にった)先生!」の言葉に女の先生は頷きピースをした。

「今日のお会計は柳先生ですからねー」

 女の先生が仁田先生。麻酔科の先生が柳先生。

 Barに着くまでの間、先生達は軽く自己紹介をしてくれた。仁田先生は年齢が三十歳の脳外科医。柳先生は三十七歳の麻酔科医。

 そして二人は羽倉先生のドクターチーム、名称は『チーム羽倉』だということも教えてくれた。

 チーム羽倉は世界的にも有名で、幾つもの難しい手術を成功させていると、羽倉先生の本のプロフィール欄に書かれてあった。そんな凄い人達と今こうしてお話しできていることは、もうこの先ないだろう。


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