憧れの街で凄腕脳外科医の契約妻になりました。
3.会いたかった人(和登side)
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ベリが丘総合病院で働き始めて半年が過ぎた。
海外の大病院は日本とは違って手術の件数も多く、毎日勉強の日々だった。海外にいる時に難しいオペの症例実績を重ねていると、ある日ベリが丘総合病院の院長から『働いてくれないか』と声が掛かった。
これまでも日本の有名な病院から声が掛かったことはいくつもあるが、なんとなく気乗りがせずに断っていた。
けれど、ベリが丘総合病院から声が掛かった時に真っ先に思い出したのは、俺が中学の頃、花岡総合病院に入院していた同室の咲村さんの顔だった。
咲村さんには亜矢ちゃんという小さいお孫さんがいること、亜矢ちゃんと遊ぶのが唯一の生きがいなこと。その他にも咲村さんがこれまで苦労してきた話や、これからしたいことなど、気分が落ちていた俺にたくさん話してくれた。
咲村さんのおかげで俺は病気のことを考える頻度も減っていたし親に話せない話など、いろんなことを話す事ができた。
咲村さんは俺に、
「よし、退院したらうちの孫の亜矢と私と和登くん三人でベリが丘に行こう!」
嬉しそうに誘ってくれた。