憧れの街で凄腕脳外科医の契約妻になりました。


 羽倉先生のプロフィールをネットで調べていると、高校の頃の友人、莉緒香からメッセージが届いた。

 莉緒香とは高校を卒業してからは全く、と言っていいほどやり取りをしなくなっていただけに、今こうしてメッセージがきたことに驚いている。

【亜矢、最近なにしてるの?】

 ――私、咲村亜矢(さきむらあや)は今年で二十五歳になる。

 目は奥二重だが、アイプチを使って二重に誤魔化している。頬がぷっくりしているところがよく、かわいいと言われたりするのだけれど、私的にはむしろコンプレックスに近い。

 髪の長さはミディアムで、鎖骨ほどの長さ。髪色は落ち着いた色合いのダークブラウンだ。

 身長は低くもなく、高くもなく、至って普通。そんな私は専門学校を卒業した後、美容のアシスタントとして働いていた。

 最近、めまいや立ち眩み、頭痛が酷く、長時間の立ち仕事がとてもきつかった為、仕事をやめるしかなかった。

 病院に行くにも「過労ですね、しっかり体を休めてください」とだけ言われ、めまいが軽くなる薬や睡眠薬などを処方してもらい、今は一人暮らし用の木造アパートの一室で貯蓄を切り崩してのんびりと過ごしている。

【仕事で無理しすぎて体壊しちゃって。今は家で過ごしてるよー】

 そう送るとすぐに電話が掛かってきた。

「私ね、つい最近大企業の社長と結婚してね。今ベリが丘に住んでるんだ。仕事していないならちょうどよかった! 旦那、出張で一週間いないから泊まりに来ない?」

 莉緒香の誘いにすかさず食いつく。

「え!? ベリが丘って、あの、有名なベリが丘!?」

 驚いた声を出す私に、莉緒香はクスクスと微笑んだ。

「そう、あの有名なベリが丘」


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