憧れの街で凄腕脳外科医の契約妻になりました。
何でベリが丘なのかを聞くと、一度でいいから孫の亜矢ちゃんに、ラグジュアリー感溢れる景色を生で見せてあげたい。この先なにかイヤなことがあってもベリが丘のことを思い出し、生きる希望にしてあげたいとのことだった。
嬉しそうに亜矢ちゃんの写真を見せてくる咲村さん。
その写真には最近撮ったであろう、亜矢ちゃんと咲村さんが写っていて、亜矢ちゃんは美味しそうにケーキを頬張っていた。
元々他人に無頓着な俺は誰かをかわいいとか、かっこいいなんて思わない。けれど、写真に写っていた亜矢ちゃんは頬がふっくらとしていて、髪は二つ結びで口の周りにたくさん生クリームをつけている様子がとてもかわいかった。
初めて他人のことを心からかわいいと思えた瞬間だった。
「かわいい」そう思わず口に出すと、咲村さんは嬉しそうに「そうだろう」と言いながら他の写真も見せてくれた。水族館でイルカにびっくりしている亜矢ちゃん、公園で泥だらけになって遊んでいる亜矢ちゃん。全部全部かわいくて、俺の心に宝石が募っていくようだった。
俺も亜矢ちゃんに会いたいと思うようになっていき、脳腫瘍全摘出の手術当日、「和登くんなら頑張れる! 負けるな!」という咲村さんの励ましで手術を頑張れた。