憧れの街で凄腕脳外科医の契約妻になりました。



 術後の後遺症もない俺を誰よりも嬉しそうに喜んでくれたのは咲村さんだった。

「次は私の番だな! 退院したら一緒にベリが丘に行こう。これは和登くんが預かっててくれないかな?」

 そう言って、一番最初に見せてくれた写真を俺に預けてきた咲村さん。咲村さんの脳の手術は来週。

 『未破裂脳動脈瘤』

 MRI検査で脳動脈の壁に膨らんだ(こぶ)があったということだった。けれど、その瘤は二十人に一人が持っているもので、通常は無症状が多いということだが、まだ五十代と若い咲村さんはその瘤の手術を早めにするらしい。あとわずか一週間、夜遅くに寝ている時のことだった。見回りにきた看護師が、

「咲村さん、聞こえますか!? こちら三丸六号室です。未破裂脳動脈瘤の咲村さんの意識がございません! 脳動脈が破裂した可能性が高いです!」

 ナースコールを鳴らしそう呼んだ。


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